「主任、それは無理です。人がいません。」


最終更新:2026年11月6日

執筆

伊東 亜樹(有限会社S.A.アソシエーション 代表)

介護支援専門員・介護福祉士・相談支援専門員。特別養護老人ホームの現場職員から施設長、法人本部での企画・運営を経て、現在も現役のケアマネジャーとして支援の現場に立つ。介護分野に特化した登録支援機関として、外国人介護人材の採用・定着・国家試験合格を支援。

「主任、それは無理です。人がいません。」

介護・福祉の会議室で、週に一度は聞く言葉だと思います。先に結論を言います。「無理です」は報告ではありません。意見です。現場から上司に上げるべきものは、意見ではなく事実情報です。誰が、いつ、何を、どこまで。期限までに何がどの状態になるのか。これを上げる職員がいる事業所と、「無理です」で会話が終わる事業所では、半年後の事故の数と離職の数が違います。私はそう見ています。

ただ、職員を責める話ではないんです。「無理です」しか言えない職員を作っているのは、たいてい受け取る側の管理者です。報告のたびに「で、どうするの?」と返す上司のもとでは、事実情報は上がらなくなる。上がるのは、怒られないための意見と、言い訳だけ。

この記事では、現場職員から施設長、法人本部まで20年以上かけて固めてきた「位置と責任」の考え方と、部下に教える「事実+お願い」の型、管理者が報告を殺さない仕組みを書きます。岐阜の冬の感染症が始まる前に、申し送りの言葉を一つ変えてほしい。それだけの話です。

1.「無理です」は報告ではなく意見 ― 介護現場の報連相が止まる場所

報連相という言葉は、どの事業所の新人研修にも出てきます。それでも現場で報告が止まる。私は、報告の中身が「事実」ではなく「意見」や「感情」に置き換わっている場面を、何百回も見てきました。

「無理です」。「人がいません」。「あの人のやり方はおかしいと思います」。全部、意見です。上司はこれを受け取っても、判断ができません。判断に必要なのは、今日の日勤が何人で、入浴予定が何人で、そのうち二人介助が何人か。それが事実情報です。

上司から「この仕事を〇日までにやっておいてほしい」と言われて、部下が「無理です。私にはできません」と返す。これは、できないのではなく、なぜその期日までにできないのかという事実情報を上げていないだけです。記録の入力に1件30分かかり、1日4件が限界で、5件にすると2時間残業になる。ここまで言えば、上司は「件数を減らす」「方法を変える」「人を足す」のどれかを決められます。「無理です」では、何も決められない。

前回の記事で、報告を姿勢のルールの5項目に入れました。報告は、やるか、やらないかだけ。ただ、報告の「中身」には上手い下手がある。ここが今日の話です。

2.現場から上司に上げるのは「事実情報」 ― 位置と責任の考え方

私が中堅職員の研修で必ず話すことがあります。「部下に、上司の判断が間違っているかどうかを判断する機能は無い。ただし、現場にしか見えない情報を上に上げる責任がある。」

前半だけ聞くと、冷たく聞こえるかもしれません。でも、後半とセットなんです。人は役割の高さに応じて見ている景色が違います。施設長は来年度の人員と収支を見ている。現場職員は、今日の利用者の顔色と、今夜の夜勤の人数を見ている。どちらにも見えていないものがある。だから情報は2方向に流れないといけない。下から上への事実情報と、上から下への指揮命令。この2本が通っている組織を、私は「風通しのよい組織」と呼んでいます。

よくある誤解は、「風通しがよい」を「何でも言える」と取ることです。違います。部下が上司の判断を評価して「それは間違っています」と言える組織ではなく、「現場ではこうなっています」という事実を、怒られずに、すぐ上げられる組織です。意見が飛び交う職場より、事実が黙らずに上がる職場のほうが、利用者は安全です。日本人の中堅職員ほど、経験があるぶん「意見」で話したくなります。「私はこう思います」の前に、「今、こうなっています」。順番が逆になった瞬間に、報告は評論に変わります。

現場からの視点

月曜朝の事故対策会議の場面です。部下が「先週の事故は3件ありました」と報告する。上司が「対策はどうするんだ」と聞く。部下が「見守りを強化して、何とか防止しようと思います」と答える。私は施設長のころ、この会話を何度も聞き、何度も自分でもやりました。

この会話には事実情報が一つもありません。3件の事故が、いつの時間帯で、どのフロアで、職員が何人のときに起きたのか。それがなければ「見守り強化」は、気合の宣言でしかない。私はこの会議の型を変えました。報告の一言目は必ず「時間帯・場所・人数・状態」。対策の話は、それが出そろってから。会議は短くなり、事故は減りました。意見を禁じたのではなく、事実を先に置かせただけです。

3.山頂と獣道 ― 上司の指示が遠回りに見えるとき、部下は何をするか

研修で使ってきた例え話があります。上司から「日没までに山の頂上に着け」と指示された。途中で道が二つに分かれていて、片方は整地された明るい道、もう片方は鬱蒼とした獣道で、動物の鳴き声がする。上司は獣道のほうへ行けと言う。部下はどうするか。

答えは、まず「事実を伝える」です。「左は鬱蒼とした獣道で動物の鳴き声がします。右は整地された道で明るく安全なようです。」ここまでが部下の仕事。上司は地図を見て「地図上は左が近道だったが、危ないな。右で行こう」と判断を変えるかもしれない。あるいは「それでも左に行ってくれ。先のリスクは私が負う」と言うかもしれない。どちらにしても、判断するのは上司で、事実を出すのは部下です。

いけないのは二つ。黙って獣道に入ること。そして「こんな道を進めなんて間違っていませんか」と、上司の判断そのものを評価すること。後者は事実情報ではなく意見です。言われた上司は、判断を変える材料をもらっていないので、守りに入ります。

介護の現場に置き換えます。「新しい入浴の手順でやれ」と言われた。その手順だと一人介助になる時間帯ができる。言うべきは「この手順はおかしいと思います」ではなく、「この手順だと14時台に職員が1人になり、〇〇さんの移乗が一人介助になります」。正論で勝とうとしない。同じ方向を向くために、事実を渡す。それが部下の位置に求められる責任です。

4.失敗は隠した瞬間に「事故」になる ― 報告が早い職場の条件

事実情報の中で、いちばん上がりにくいのが自分の失敗です。私が外国人職員向けの定着支援テキストに書いた一文をそのまま引きます。「失敗は、隠した瞬間に『事故』になります。すぐ言えば、『報告』になります。」

同じテキストで、失敗したときの4ステップを30秒以内にやるよう教えています。安全、報告、事実、行動。まず利用者は大丈夫かを見る。すぐ近くの職員に言う。いつ・どこで・何をしたかを言い訳なしで言う。次にどうするかを聞く。順番がすべてです。4つのうち「事実」の段階で言い訳が混じると、報告は意見に戻ります。

私自身の話を一つだけ。生活相談員になったばかりのころ、「疥癬」という感染症を「水虫」だと思い込んで、ショートステイの利用者を受け入れました。看護師に激怒されました。あのときの私に足りなかったのは知識ではなく、「わからないと言って確認する」という一手でした。テキストにはこう書きました。「無知は、罪ではありません。でも『わからないまま決める』ことは、利用者の命にかかわります。」事実情報を上げるとは、起きたことだけでなく、「自分はまだ分かっていない」という事実も上げることです。

この話には管理者側の鏡があります。テキストには「聞く人は、評価が下がりません。聞かない人が、評価が下がります。」と書きました。これを本当にする責任は、管理者にあります。小さな失敗を報告した職員に「なんでそんなことを」と言った瞬間、その職場の報告は半年止まります。

現場からの視点

夜勤帯、深夜2時の場面です。職員が巡視で、利用者の皮膚に赤みを見つけた。前の勤務では記録がない。ここで「朝まで様子を見よう」と一人で決めるか、オンコールのリーダーに「〇〇さんの右かかとに2センチくらいの赤みがあります。前の記録にはありません」と伝えるか。

私は、迷ったら必ず上げる側に賛成です。「こんな時間に起こして」と言われるのが怖い気持ちは分かります。でも、「判断はしません。報告します。」が介護の報告の基本です。赤みが褥瘡の始まりだったのか、ただの圧迫痕だったのかを決めるのは、夜勤者の仕事ではない。管理者への提案は一つ。深夜の報告を受けたとき、内容がどうであれ、一言目を「ありがとう、よく見てくれた」にしてください。二言目に判断を言う。この順番を守る管理者の下では、夜勤者は黙らなくなります。

5.「事実+お願い」の型 ― 介護現場の報告を言い換える表

では、職員にどう教えるか。私がテキストで使っている型は「事実+お願い」です。「伝え方は『事実+お願い』。正論で勝つ × → 同じ方向を向く ○」。自分の気持ちや評価ではなく、起きている事実を言い、そのうえで何をしてほしいかを一つ付ける。これだけです。

現場でよく出る言葉を、この型で言い換えた表を置きます。外国人職員向けに作ったものですが、日本人の新人にも中堅にも、そのまま使えます。

※ 表は横にスクロールできます

場面 よく出る言葉(意見・感情) 判定 事実+お願いの言い方
仕事が多すぎる 「多すぎます」「無理です」 意見 「今、AとBとCがあります。どれを先にしますか。」
期限に間に合わない 「できません」「人がいません」 意見 「1件30分かかり、今日は4件が限界です。5件目は明日の午前でよいですか。」
教え方が人で違う 「〇〇さんは、違うと言いました」 評価 「前に△△と教わりました。今日は、□□でやりますか。」
体調が悪い がまんして続ける(何も言わない) 沈黙 「熱があります。〇〇までは終わります。その後、相談させてください。」
上司の指示に危なさを感じる 「その手順は間違っていると思います」 評価 「この手順だと14時台に職員が1人になります。〇〇さんの移乗が一人介助になります。」
利用者の変化に気づいた 「元気がない気がします」 印象 「〇〇さん、今日は朝ごはんを半分しか食べていません。」
自分が失敗した 「小さいので言いませんでした」 隠す 「すみません、〇〇してしまいました。いつ・どこで・何を。次から、〇〇します。」

『福祉の仕事 考え方と姿勢の本』第5章・第6章の「伝え方のテンプレート」をもとに、管理者向けに筆者が加筆

右の列の共通点は2つ。数字と固有名詞が入っていること。「どうしますか」「よいですか」と、判断を上司に戻していること。左の列は、どれも上司に判断材料を渡していない。だから上司は「で、どうするの」と聞き返し、部下は責められたと感じ、次から黙る。報連相が止まる場所は、ここです。

テキストで新人に伝えている言葉を添えます。「報告した人が、評価されます。『報告が多い新人』は、いい新人です。」これを管理者が本気で信じているか。新人は、言葉ではなく、報告したあとの上司の顔で判断しています。

6.報告を殺すのは管理者 ― 事実情報が上がらなくなる3つの返し方

ここからは管理者の側の話です。正直、事実情報が上がらない事業所の原因は、職員の能力より、受け取る側の返し方にあることがほとんどです。私が見てきた中で、報告を殺す返し方は3つに絞れます。

1つ目:「で、どうするの?」を一言目に言う

事実の報告に対して、いきなり対策を求める。部下は「対策まで持ってこないと怒られる」と学習します。すると対策が思いつかない事実は、上がらなくなる。深夜の皮膚の赤みも、利用者の食事量の変化も、「対策が言えないから」黙る。一言目は受け取りの言葉、二言目に判断。この順番を崩さないことです。

2つ目:報告の中身ではなく、報告の仕方を叱る

「そんな言い方はないだろう」「もっと早く言え」。言いたくなります。でも、報告のたびに叱られた職員は、報告そのものを避けます。言い方の指導は、その場ではなく、あとで型を渡して教える。テキストの「事実+お願い」の表を印刷して配るほうが、その場で叱るより早く直ります。

3つ目:聞いて、動かない

一番多いのがこれです。「14時台に職員が1人になります」と上げたのに、何も変わらない。職員は「言っても変わらない」と学びます。テキストの第1章に書いたとおり、「問題は、不満があることではありません。不満を、黙って持ち続けることです。」職員を黙らせているのは、聞いて動かない管理者です。動けないなら、動けない事実を返す。「来月の採用で2人入る。それまで14時台は私が入る」。上から下にも、事実が流れないといけない。

現場からの視点

利用者宅で、家族に説明する場面を考えてください。私はケアマネジャーとして今も現場に立ちます。デイサービスの職員から「最近、〇〇さんの元気がない気がします」と連絡が来たとき、私は家族にそのまま伝えられません。伝えられるのは、「先週から昼食の摂取量が半分以下の日が3日あり、体重が1か月で1.5キロ減っています」という事実だけです。

現場の報告が事実情報になっていないと、家族への説明も、主治医への相談も、全部止まるんです。私は、申し送りに「数字と固有名詞を1つ以上入れる」というルールを置くことに賛成です。印象の報告を禁じるのではなく、印象の横に必ず事実を一つ置かせる。それだけで家族への説明が変わります。

7.事業所で明日からやること ― 事実情報が上がる仕組みの5ステップ

気合では続きません。仕組みにします。順番だけ守ってください。

  1. 管理者が、自分の返し方を1週間記録する

    職員に求める前に、自分が報告を受けたとき一言目に何を言ったかを、1週間メモしてください。「で、どうするの」「なんで今なの」が何回出たか。私がやったときは、初日で3回出ました。自分の×を認めてから始めると、職員の反発が消えます。

  2. 報告の一言目を「時間・場所・人数・状態」に固定する

    申し送り、事故報告、会議の報告、すべて同じ型にします。「14時台、2階、職員1人、〇〇さんの移乗が一人介助」。意見や対策は、この4つが出てから。ホワイトボードに4つの言葉を書いて貼るだけで足ります。

  3. 「事実+お願い」の表を印刷して、新人と中堅に配る

    第5章の表を、自分の事業所でよく出る言葉に直して配ってください。外国人職員には母国語を併記する。「無理です」が出たら叱らず、「表の右で言ってみて」と返す。3か月続けると、表を見なくても出るようになります。

  4. 受け取りの一言目を全管理者で統一する

    「ありがとう、よく見てくれた」でも「了解、助かる」でも構いません。内容が悪い報告でも、一言目は同じ。二言目から判断と指示。夜勤帯のオンコールも同じにします。ここがそろわないと、職員は「あの人には言えるが、この人には言えない」と上司を選び始めます。

  5. 上がった事実に、必ず「動いたこと」か「動けない事実」を返す

    月に1回、上がった事実情報と、それに対して何をしたかを一覧にして職員に見せます。動けなかったものは、理由を事実で書く。「言ったら変わる」「変わらないときは理由が返ってくる」。この2つがそろった職場で、事実情報は止まりません。

ステップ1と4は、職員ではなく管理者の行動です。3から始める事業所がよくありますが、うまくいきません。受け取る側が変わっていないところに型だけ配ると、「型どおりに言ったのに叱られた」という最悪の学習が起きるからです。

8.よくある反論に答える

「意見を言わせない職場になりませんか」

なりません。順番の話です。事実を先に、意見はその後。むしろ、事実が先に出る職場のほうが、意見は通ります。「14時台に1人になる」という事実があれば、「手順を戻したい」という意見には根拠がつく。事実のない意見は、声の大きい人が勝つだけです。

「上司の判断に従え、は古い考え方では」

半分は賛成です。上司の判断が常に正しいとは、私も思っていません。だからこそ、現場の事実を上げる責任が部下にあり、それを受けて判断を変える責任が上司にある。部下が判断の側に回った瞬間に、責任の所在が消えます。事故が起きたとき「私はおかしいと思っていました」は、利用者も家族も救いません。上げた事実と、受けた判断が記録に残っている。それが職員を守る盾になります。

「外国人職員には難しいのでは」

逆です。「事実+お願い」の型は、日本語が完璧でない職員のほうが早く身につきます。感情や敬語の加減を考えなくていいからです。「〇〇さん、朝ごはん、半分です」。これで通じます。難しいのは、日本語が達者な中堅職員の「私はこう思うんですけど」のほうです。面談で「大丈夫です」としか返ってこないのも同じ根です。気持ちを聞くから意見が返る。事実を聞けば事実が返る。

現場からの視点

面談室で、入職2年目の職員からこう言われたことがあります。「言っても怒られるし、言わなくても怒られる。だったら言わないほうが楽です」。この一言を聞いて、私は自分の管理を反省しました。言ったあとに怒られる職場で、事実情報が上がるわけがない。

私はその職員に、二つ約束しました。一つ、事実を上げてくれたら、一言目は必ず「ありがとう」から始める。二つ、動けないときは、動けない理由を事実で返す。そして自分の返し方の記録を、その職員にも見せました。3か月後、その職員の報告は事業所で一番多く、一番短くなりました。報告が多い職員は、いい職員です。それを本当にするのは、職員の努力ではなく、管理者の返し方です。

最後に、育成とつなげておきます。事実情報を上げる習慣は、国家試験の勉強と同じ構造です。小さく、毎日、言葉にする。学び続ける仕組みの「1日10分」と同じで、報告も1日1回の事実から始まります。育成と報告は、同じ筋肉を使っています。

9.よくある質問

介護現場の報告で「事実情報」とは、具体的に何を言えばよいですか。

時間帯、場所、人数、状態の4つです。「14時台、2階、職員1人、〇〇さんの移乗が一人介助」のように、数字と固有名詞が入っていれば事実情報になります。「無理です」「元気がない気がします」のような意見や印象は、その横に必ず事実を一つ添えてください。

部下が「無理です」としか言わないとき、管理者はどう返せばよいですか。

叱らずに「今、何が何件あって、どこまでできる?」と事実を聞き返してください。そのうえで「事実+お願い」の型を紙で渡し、「次からはこの右の列で言ってみて」と伝えます。その場で言い方を直させるより、型を配って3か月続けるほうが早く定着します。

上司の指示が現場の実態と合わないとき、部下はどこまで言ってよいのですか。

現場で見えている事実は、すべて上げてください。「この手順だと14時台に一人介助になります」までが部下の責任です。「この指示は間違っています」と判断そのものを評価するのは、事実情報ではなく意見です。事実を受けて判断を変えるか、そのまま進めてリスクを負うかは、上司の責任になります。

職員の失敗報告を増やすには、何から始めればよいですか。

管理者が、報告を受けたときの一言目を「ありがとう、よく見てくれた」に固定することからです。内容がどうであれ一言目は同じにし、二言目から判断を言います。あわせて「失敗は30秒以内に、安全・報告・事実・行動の順で」と型を教え、報告した職員の評価を実際に下げないことを続けると、報告は増えます。

外国人介護職員に事実情報の報告を教えるとき、日本人職員と違う点はありますか。

型は同じです。「〇〇さん、朝ごはん、半分です」のように、数字と固有名詞だけで通じるので、日本語が完璧でなくても身につきます。違うのは、「事実+お願い」の表に母国語を併記することと、受け取る側が言い方の拙さを叱らないことです。叱られた経験が一度あると、その後は黙るようになります。

10.まとめ

押さえる点は3つです。

1つ。「無理です」は報告ではなく意見です。現場から上司に上げるのは事実情報。時間・場所・人数・状態。部下に上司の判断を評価する機能はないが、現場にしか見えない事実を上げる責任がある。

2つ。失敗は、隠した瞬間に事故になり、すぐ言えば報告になる。「事実+お願い」の型を紙で渡し、数字と固有名詞を入れて、判断を上司に戻す言い方を教える。

3つ。報告を殺すのは、受け取る側の一言目です。「で、どうするの」をやめ、「ありがとう」から始め、上がった事実には動いたことか動けない事実を返す。管理者が先に変わらないと、型は定着しません。

意見で勝つな。事実で向く方向をそろえろ。私が20年の現場で、何度も自分に言い聞かせてきた言葉です。明日の申し送りで、一言目に数字を一つ入れてみてください。そこから、職場の空気が変わります。

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有限会社S.A.アソシエーション(登録支援機関/岐阜)

出典・参考資料

  • 『福祉の仕事 考え方と姿勢の本 ― 半年・1年たった あなたへ』第1章「不満があるのは、悪いことではない」、第5章「わからないことは、聞く。失敗は、隠さない」、第6章「言わなければ、わからない」(有限会社S.A.アソシエーション 定着支援テキスト、2026年10月)
  • 有限会社S.A.アソシエーション 職員研修資料(中堅職員研修「位置と責任」「評価の方向」ほか)

※本記事は2026年11月6日時点の情報と筆者の経験をもとに作成しています。「現場からの視点」および報告の仕組みに関する記述は、筆者の経験に基づく見解であり、登場する場面は特定の個人や事業所を示すものではありません。個別の事業所の労務管理や事故対応については、専門家や所管の窓口にもご確認ください。