この記事でわかること
- 外国人材の「退職のサイン」を、毎月1分のアンケートで先に拾う仕組み
- 本人が安心して正直に答えられるように、約束していること
- 受入企業の皆さまに毎月お渡しするレポートの中身
「大丈夫です」。3か月に1度の定期面談で、外国人材の方からいちばんよく聞く言葉です。そして、その言葉から数週間後に「辞めたい」「国に帰りたい」と連絡が来ることも、残念ながら珍しくありません。
S.A.アソシエーションでは、支援している外国人材の方に毎月1回、スマートフォンで1分のアンケートに答えてもらう取り組みを行っています。答えの変化から「退職のサイン」に先に気づき、本人に声をかけ、受入企業には毎月レポートをお渡しする仕組みです。この記事では、その中身と、なぜこの形にしたのかをご紹介します。
なぜ月1回のアンケートなのか
理由は2つあります。
1つ目は、支援の中身が受入企業から見えにくいことです。登録支援機関の仕事は、定期面談、生活相談、役所手続きの同行、受入企業との調整など多岐にわたります。ただ、その多くは企業の方の目に触れません。きちんと支援していても「結局、何をしてくれているの?」と思われてしまう場面がありました。
2つ目は、退職や失踪には必ず前兆があるということです。眠れていない、同僚との関係がぎくしゃくしている、お金に困っている。本人は面談で「大丈夫」と言いますが、サインは出ています。3か月に1回の面談では、その間に起きた変化を拾いきれません。
毎月、短い質問で「変化」を記録し、気になる人に先に声をかける。その動きを受入企業にも共有する。この2つを同時にかなえる仕組みです。
仕組みの全体像
毎月、本人のスマートフォンに専用リンクを送り、都合のよいときに答えてもらいます。答えは自動で判定され、気になる人には担当者が先に声をかけます。受入企業には、月ごとにレポートをお渡しします。
聞いているのは4つのこと+自由記述
答えるのは6問、所要1分です。名前は専用リンクを開いた時点で入っているので、本人が打つ必要はありません。
- この1か月、よく眠れましたか
- 仕事はどうでしたか(量、むずかしさ、体の疲れ)
- 会社の人との関係はどうでしたか(上司、先輩、同僚)
- 生活はどうでしたか(お金、住むところ、食事、家族のこと)
- 話したいこと、困っていることがあれば何でも(自由記述・任意)
- 担当者から連絡がほしいですか(はい/いいえ)
1〜4は5段階で、絵文字付きです。日本語の読み書きが苦手な方でも、絵文字を見れば答えられます。
文はすべて「やさしい日本語」で書き、母語版も順次用意しています。4つの項目にしたのは、退職や失踪の理由がこのどれかに必ず現れるからです。睡眠は心身の状態、仕事は負荷、人間関係は職場の居心地、生活は職場の外の困りごと(お金や住まい)を映します。
点数より「変化」と「沈黙」を見る
点数が低い人に連絡する、だけでは足りません。退職のサインは、先月より下がった人、自由記述に特定の言葉を書いた人、そして答えなくなった人に出ます。そこで、次のどれか1つに当てはまった時点で、担当者に知らせる仕組みにしています。
4項目のどれかが「2 あまりよくない」以下
1項目で2点以上下がった。または合計点が2か月続けて下がった
自由記述に「帰りたい」「辞めたい」「お金がない」「眠れない」「怖い」など
「担当者から連絡がほしい」にチェック
答えが返ってこない。沈黙もサインです
「人間関係」と「生活」が同時に下がる。自由記述が急に空欄や一言になる。答えが途切れる
該当した方には、担当者ができるだけ早く電話か訪問で様子を聞きます。「アンケートでこう書いていたね」とは言いません。「最近どう?」から入ります。
「正直に答えても不利にならない」を約束する
本音が出なければ、この仕組みは意味がありません。そこで、本人に次の4つを約束しています。
- 回答を見るのは、S.A.アソシエーションの担当者だけ
- 受入企業には、個人の回答を見せない(渡すのは集計だけ)
- 評価や契約更新の判断には使わない(受入企業にも書面でお願いしている)
- 本人の了承がなければ、個別の内容を企業に伝えない
この約束はフォームの冒頭に毎回表示し、初回は電話か対面で直接説明します。アンケートの結果をもとに企業と相談が必要なときも、まず本人に「会社に伝えてもいいですか」と確認してからです。
逆に言えば、企業の方に個人の回答をお見せできないのは、この仕組みが成り立つための前提です。その代わりに、次に説明する月次レポートで支援の動きをお伝えします。
受入企業には毎月1枚のレポート
月ごとに、企業ごとに1枚のレポートをお渡しします。中身は次の4つです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 回答率 | 在籍している方のうち、何人が答えたか |
| アラート件数と対応済み件数 | 声をかけた件数と、対応が終わった件数。個人名や内容は書かない |
| 4項目の平均点と前月比 | 睡眠・仕事・人間関係・生活の平均点(5点満点)と、前の月からの変化 |
| 支援機関からの一言 | 「今月は2件声をかけ、1件はご本人了承のうえで来週ご相談します」のような対応状況のまとめ |
企業の方にとっては、支援機関が毎月何をしたかが見えるだけでなく、自社の職場の状態を数字で客観的に見る機会にもなります。人間関係の平均点が3か月続けて下がっていれば、個人の問題ではなく職場の問題かもしれません。そうした相談の入口にもなればと考えています。
特別なシステムではありません
使っているのはGoogleフォームとスプレッドシートです。専用リンクを毎月LINEやWhatsAppで送り、答えが集まると点数や前月との差が自動で計算される。それだけの仕組みです。高価なツールを入れなくても、毎月続けることはできます。
続けるために一番大事にしているのは、結果を返すことです。本人には「あなたが書いてくれたことで、こう動いた」を。企業には「今月はこうでした」を。返事のないアンケートは、いずれ答えてもらえなくなります。逆に、答えると何かが変わると分かれば、本音は少しずつ出てきます。
外国人材の定着は、採用した後に何を続けるかで決まります。「大丈夫です」の裏側に先に気づける支援機関でありたい。そう考えて、この仕組みを続けています。
受入企業の方で、この取り組みにご関心のある方はお気軽にご相談ください。仕組みの画面を見ながらご説明します。
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