「外国人のスタッフ、訪問介護に出してもいいんですか?」


最終更新:2026年10月15日

執筆

伊東 亜樹(有限会社S.A.アソシエーション 代表)

介護支援専門員・介護福祉士・相談支援専門員。特別養護老人ホームの現場職員から施設長、法人本部での企画・運営を経て、現在も現役のケアマネジャーとして支援の現場に立つ。介護分野に特化した登録支援機関として、外国人介護人材の採用・定着・国家試験合格を支援。

「外国人のスタッフ、訪問介護に出してもいいんですか?」

この1年で、岐阜県内の事業所さんから一番多くいただいた質問です。答えは「出せます。ただし条件つきで」。2025年4月から、特定技能と技能実習の外国人介護人材が、訪問介護などの訪問系サービスに従事できるようになりました。

ところが、その条件が細かい。本人の要件、事業所が守るべき5つの事項、国際厚生事業団(JICWELS)への申請、キャリアアップ計画の定期報告。厚生労働省のページに全部書いてはあるのですが、通知とQ&AとPDFを行ったり来たりしているうちに日が暮れます。

この記事では、制度を「実務でやる順番」に並べ直しました。そのうえで、特養の現場職員から施設長、法人本部を経て、いまも現役のケアマネジャーとして利用者さんのお宅に上がっている私の考えを、遠慮なく書きます。制度の解説だけなら、ほかにも良い記事があります。ここでは「で、うちはどうすればいいのか」まで踏み込みます。

1.結論:2025年4月から、条件つきで従事できる

まず結論です。技能実習は2025年4月1日、特定技能は同年4月21日の施行で、介護職員初任者研修などを修了し、原則1年以上の実務経験がある外国人介護人材は、訪問介護などの訪問系サービスに従事できるようになりました。それまで訪問系に入れたのは、在留資格「介護」(介護福祉士の資格を持つ人)と、国家試験に合格したEPA介護福祉士だけでした。

※ 表は横にスクロールできます

在留資格 訪問系サービスへの従事 条件
在留資格「介護」 可(従来から) 日本人職員と同じ扱い。今回の遵守事項・適合確認の対象外
EPA介護福祉士(資格取得後) 可(従来から) 同上
特定技能1号「介護」 可(2025年4月21日〜) 本人要件+事業所の5つの遵守事項+JICWELSの適合確認
技能実習「介護」 可(2025年4月1日〜) 同上
EPA介護福祉士候補者(資格取得前) 対象外 受入れ施設での就労・研修が前提。今回の改正の対象に含まれない
育成就労(2027年4月〜) 要確認 技能実習の後継制度。介護分野の固有要件は厚労省の告示で定められているため、受入れ前に最新の運用要領で確認

出典:厚生労働省「外国人介護人材の訪問系サービスへの従事について」をもとに作成

ここで覚えておいてほしいのは、これが「特定技能と技能実習だけの特別ルール」だということです。在留資格「介護」を取った瞬間に、訪問系の制限も、同行訪問の義務も、適合確認も要らなくなります。つまり、外国人職員に訪問介護を本格的に任せたいなら、ゴールは介護福祉士の取得です。この視点は、後半でもう一度出てきます。

2.なぜ訪問介護が解禁されたのか。数字で見る現場の実情

背景は単純で、訪問介護が持たなくなってきたからです。東京商工リサーチによると、2025年の訪問介護事業者の倒産は91件。前年の81件を上回り、3年続けて過去最多を更新しました。8割超が売上不振で、その裏には、ヘルパーの退職で訪問件数を維持できなくなった事業所の姿があります。

一方で、外国人介護人材は増え続けています。介護分野の特定技能外国人は、2026年7月末で81,436人(出入国在留管理庁、速報値)。2026年8月に公表された介護労働安定センターの「介護労働実態調査」では、外国籍労働者を受け入れている事業所・施設は18.6%と、前年度から2.8ポイント上がりました。受入れ中の事業所の26.4%が「積極的に拡大したい」と答えています。

91件2025年の訪問介護事業者の倒産
(3年連続で過去最多)
18.6%外国籍労働者を受け入れている
介護事業所・施設の割合
47.2%訪問系サービスで「外国人材を
受け入れる予定はない」と回答

出典:東京商工リサーチ(2026年1月8日)、介護労働安定センター「介護労働実態調査」(2026年8月公表)

ところが、同じ調査で訪問系サービスの事業所に聞くと、47.2%が外国人介護人材を「受け入れる予定はない」と答えています。解禁から1年以上たって、半数近くが「予定なし」です。

現場からの視点

私はこの47.2%を責める気になれません。訪問介護の事業所は小さい。サービス提供責任者が1人で、シフトも苦情対応も実績入力も全部見ている、という事業所が珍しくないんです。そこに「半年同行してください」「研修をしてください」「相談窓口を作ってください」と言われても、同行に出す人がいない。

制度の扉は開いたけれど、入口の段差が高い。この段差をどう越えるかが、この記事の後半の主題です。

3.従事できる外国人の要件(本人側)

厚労省が示す本人側の要件は、次の2つです。

  1. 介護職員初任者研修課程等を修了していること
  2. 介護事業所等での実務経験が1年以上あること(原則)

実務経験1年未満の例外

受入れ事業所の判断で、1年未満でも従事させられる道はあります。ただし、N2相当など、在留資格上求められる水準より高い日本語能力があることが条件で、さらに同行訪問を利用者ごとに行い、週1回のサービス提供なら半年間は同行する、といった手厚い運用が求められます。「1年未満でも行ける」というより、「1年未満なら、その分を同行で埋める」と理解したほうが実態に近いです。

実務経験に数えられない勤務先がある

特定技能外国人の従事が認められていない施設・事業所での勤務は、訪問系サービスに求められる実務経験(1年以上)に算定されません。たとえば、特定施設入居者生活介護の指定を受けていない住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は、特定技能の対象施設に入っていません。職歴を確認するときは、「何年」だけでなく「どこで」まで見てください。

現場からの視点

「1年」は最低ラインだと思っています。施設の1年は、チームで動く1年です。隣に先輩がいて、ナースコールがあって、分からなければ詰所に戻れる。訪問は玄関を開けた瞬間から1人です。その違いは、年数では測れません。

私が見るのは3つです。電話で状況を筋道立てて報告できるか。記録が、あとから読んだ人に伝わる文章で書けるか。そして、分からないときに「分かりません」と言えるか。JLPTの級よりも、この3つのほうが現場では効きます。N2を持っていても「分かりません」が言えない人は、まだ訪問には出せません。

4.受入れ事業所の5つの遵守事項と、利用者・家族への説明

外国人介護人材を訪問系に出す事業所は、利用者・家族への事前説明に加えて、次の5つを守る必要があります。制度の文言と、実務で用意するものを並べました。

  1. 1. 訪問介護等の業務の基本事項に関する研修を行うこと業務の流れ、生活支援技術(調理・掃除・洗濯)、日本の生活文化やマナー、緊急時対応をまとめた研修カリキュラムと、実施した記録
  2. 2. 一定期間、責任者等が同行するなどの訓練を行うことサービス提供責任者や先輩職員が同行。厚労省の「同行訪問チェックシート」で到達度を記録し、独り立ちの判断の根拠を残す
  3. 3. 業務内容を丁寧に説明し、意向を確認しながらキャリアアップ計画を作成すること本人と一緒に作る。評価期間は1年。厚労省の様式あり
  4. 4. ハラスメント防止のため、相談窓口の設置等の措置を講ずること窓口の担当者と連絡手段を決め、本人の母語でも伝わる形で周知する
  5. 5. 不測の事態に対応できるよう、ICTの活用を含めた環境整備を行うことすぐつながる連絡手段、翻訳アプリや記録システム、緊急時の連絡フロー

利用者・家族への事前説明については、厚労省が説明様式を出しています。実務経験1年以上の人向けと1年未満の人向けで様式が分かれているので、該当するほうを使ってください。

現場からの視点

ケアマネとして、私は説明する側に立ちます。経験上、ご家族の不安の正体は国籍ではありません。「誰が来るのか分からない」ことです。だから説明は「外国人ですがよろしいですか」というお願いではなく、「○○さんという職員です。施設で1年、こういう仕事をしてきました。最初の数か月はサービス提供責任者の△△が一緒に伺います」という紹介にする。顔と経歴と同行者が見えれば、たいていのご家庭は受け入れてくれます。

ハラスメントの話も、外国人だけの問題ではありません。訪問介護は密室の仕事で、日本人のヘルパーも同じ危険の中にいます。制度が相談窓口の設置を明文化したことは、結果的に日本人職員を守る仕組みにもなる。私はそう捉えて、この機会に事業所全体の窓口を作り直すことを勧めています。

ICTについても一言。「不測の事態」と聞くと体調の急変を想像しますが、現場で多いのは、鍵が開かない、呼んでも応答がない、ご家族に怒鳴られた、といった場面です。必要なのは高価なシステムより、その場で電話がつながる人が必ずいること。そこが本質です。

5.手続きの流れ:適合確認申請から定期報告まで

手続きは、次の4ステップで進みます。申請先は厚労省ではなく、巡回訪問等実施機関である公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)です。

  1. 体制を整える

    5つの遵守事項を満たす研修計画、同行訪問の体制、相談窓口、緊急時の連絡フローを文書にします。ここが一番時間がかかります。

  2. JICWELSに適合確認を申請する

    「訪問系サービスの要件に係る報告書」を提出し、確認後に適合確認書が発行されます。申請ページは技能実習と特定技能で別です。

  3. 説明・同意、同行訪問、独り立ち

    利用者・家族に様式で説明して同意を得てから、同行訪問を始めます。同行訪問チェックシートで記録を残し、独り立ちの時期を判断します。

  4. キャリアアップ計画の定期報告

    評価期間は1年。終期から4か月以内に、次の期間の計画とあわせてJICWELSに提出します。特定技能外国人を訪問系に従事させる事業所には、遵守状況を確認する巡回訪問が定期的にあります。

同一法人内で、施設から訪問系に移す場合

すでに法人内の施設で働いている外国人介護人材を、同じ法人の訪問介護事業所に転籍させる場合に提出する書類の一覧(別紙3)が厚労省から出ています。特定技能の場合は、従事する事業所が変わるので、協議会システムの登録変更も忘れずに。協議会の手続きは前回の記事にまとめています。

6.対象になる訪問系サービス

介護保険で対象になる訪問系サービスは、次のとおりです。

  • 訪問介護
  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
  • 夜間対応型訪問介護
  • 介護予防・日常生活支援総合事業(第一号訪問事業に限る)

障害福祉サービス等の訪問系サービスについても、別途、留意点が通知されています。自社の事業所が対象かどうかは、厚労省の「対象施設一覧(別紙2)」で確認してください。

7.現場からの提案:「施設で1年育てて、訪問へ」が現実解

ここからは制度の話を離れて、私の提案です。

小さな訪問介護事業所が、海外から来たばかりの外国人を直接受け入れて、研修も同行も自前でやる。これは正直、かなり厳しい。そもそも実務経験1年の要件があるので、来日直後の人は訪問系に出せません。

現実的なのは、法人内に施設系があるなら、まず施設で1年育てることです。チームの中で、日本の介護の基本と、報告・記録の型を身につけてもらう。そのうえで、訪問に向く人を見極めて、同じ法人の訪問介護事業所に移す。厚労省が「同一法人内での転籍」の書類一覧をわざわざ用意しているのは、この流れを想定しているからだと私は見ています。

訪問に向く人の見極めは、さっき書いた3つです。報告できる、記録できる、分からないと言える。これに加えて、1人の時間を楽しめるか、も見ます。施設の賑やかさが好きな人は、訪問の静けさがきつい。本人に聞けば、だいたい正直に答えてくれます。

同行訪問は「制度上の義務」と思うと負担にしかなりませんが、「利用者さんとの関係を一緒に作る期間」と考えれば意味が変わります。私の感覚では、半年の同行は長すぎません。週1回しか会わない利用者さんなら、半年でやっと20回ちょっと。顔を覚えてもらって、台所のどこに何があるか分かって、ようやく独り立ちです。

キャリアアップ計画も同じです。書類仕事に見えますが、本人と一緒に「3年後に介護福祉士を取って、在留資格『介護』に変える。そうすれば訪問の制限も同行の義務もなくなる」と書き込む。ゴールが見えると、人は辞めません。私たちが介護福祉士合格支援プログラム(CCW)を作ったのも、この「ゴールを見せる」ためです。

では、施設を持たない単独の訪問介護事業所はどうするか。自前で全部やらない、に尽きます。研修と日本語は登録支援機関や外部の仕組みに預け、事業所は同行と関係づくりに集中する。小さい事業所ほど、分業が要ります。登録支援機関の選び方はこちらの記事に書きました。

8.今後の動き(2026年10月時点)

  • 2027年4月、育成就労が始まります。技能実習の後継制度で、介護分野の固有要件は厚労省の告示で定められています。訪問系サービスの取扱いは、受入れ前に最新の運用要領で確認してください。
  • 特定技能「介護」の受入れ枠が上限に近づいています。2029年3月までの受入れ見込数126,900人に対し、2026年7月末で64.2%(出入国在留管理庁)。日本経済新聞(2026年10月13日)は、政府が介護分野の受入れ停止を避けるために分野区分の変更を検討し、年内の閣議決定を目指していると報じました。
  • 訪問系の要件が見直される可能性があります。2026年度の老人保健健康増進等事業で、訪問系サービスでの外国人材受入れに関する調査研究が進んでおり、介護分野の固有要件の検討も目的に含まれています。年度末の報告書に注目です。
  • 2027年4月、1号特定技能外国人への支援体制の要件が改正されます。自社支援か委託かを、今のうちに見直しておきましょう。

9.よくある質問

技能実習生でも訪問介護に入れますか?

入れます。2025年4月1日から、介護職員初任者研修課程等を修了し、原則1年以上の実務経験がある技能実習生は、事業所が遵守事項を満たしてJICWELSの適合確認を受ければ、訪問系サービスに従事できます。

実務経験が1年未満でも従事させられますか?

例外的に可能です。N2相当など在留資格上求められる水準より高い日本語能力があることが条件で、同行訪問を利用者ごとに行い、週1回のサービス提供なら半年間は同行するなど、手厚い運用が求められます。

適合確認の申請先はどこですか?

公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)です。「訪問系サービスの要件に係る報告書」を提出し、確認後に適合確認書が発行されます。技能実習と特定技能で申請ページが異なるので注意してください。

利用者やご家族に断られたらどうすればいいですか?

事前の説明と同意が前提なので、断られた場合に無理に配置することはできません。別の職員で対応するか、同行訪問を続けて様子を見ながら、担当のケアマネジャーと相談してください。顔と経歴と同行者が見える説明をすると、受け入れてもらえることが多いです。

在留資格「介護」を持つ職員にも、この手続きは必要ですか?

不要です。在留資格「介護」と、国家試験に合格したEPA介護福祉士は従来から訪問系サービスに従事でき、今回の遵守事項や適合確認の対象外です。日本人職員と同じ扱いになります。

10.まとめ

制度のポイントは3つです。本人は初任者研修の修了と実務経験1年。事業所は5つの遵守事項と利用者・家族への説明。手続きはJICWELSへの適合確認と、年1回の定期報告。

そして、私からの提案は1つ。施設で育てて、見極めて、訪問へ。同行の半年を「義務」ではなく「関係づくりの期間」として使い、キャリアアップ計画に介護福祉士というゴールを書く。

訪問介護は、利用者さんの生活に一番近い仕事です。だからこそ、誰を出すか、どう支えるかを、制度の最低ラインより少しだけ丁寧に決めたい。そう思っています。

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