外国人介護スタッフの定着支援で失敗しないために
外国人材の採用が当たり前になりつつある介護業界。
「人手不足だから」「日本人が来ないから」──そんな背景で導入を検討する施設も多いかと思います。
ですが、採用はあくまで“入口”にすぎません。
本当に大切なのは、“入ってからどう育てるか”“どう続けてもらうか”です。
今回は、私たちが現場で支援してきた中で見えてきた、定着支援の失敗パターンと成功のポイントをまとめてお伝えします。
■ よくある失敗①「最初の2ヶ月を乗り越えられない」
外国人スタッフが退職してしまうタイミングとして最も多いのが、入社から1〜2ヶ月以内です。
この時期は、日本の生活にも、職場にも、慣れることに必死。
小さなストレスや孤独が積み重なり、「もう無理かも」と思いやすくなります。
🔸失敗の原因例:
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入居手続きや役所対応がうまくいかない
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生活ルールが分からず近隣トラブル
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誰にも相談できないまま孤立
👉 解決策:
この時期こそ、支援機関と現場が連携して、手取り足取りのサポートを厚くすることが重要です。
■ よくある失敗②「現場で“育てる余裕”がない」
「外国人スタッフ、まだ覚えてないの?」「なんで自分から動けないの?」
こうした声が現場で聞かれるとき、“即戦力”としての期待値が高すぎることが多いです。
文化も言葉も違う中、仕事を覚えるスピードは日本人よりゆっくりなこともあります。
🔸失敗の原因例:
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教える人が日々の業務で手一杯
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伝えたつもりでも、ニュアンスが通じていない
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ミスが続いて信頼関係が崩れる
👉 解決策:
最初の1〜3ヶ月は、“育成期間”と割り切って、計画的なOJTを用意するのがおすすめです。
特にマニュアルやチェックリストなど、“見てわかる仕組み”があると効果的です。
■ よくある失敗③「気づけば“通訳役”になっている」
よくあるのが、日本語の得意な1人の外国人スタッフにすべての通訳・調整を依頼してしまい、
本人が疲弊して辞めてしまうというパターンです。
🔸失敗の原因例:
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本人も正確に訳せているわけではない
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責任感で抱え込み、ストレスに
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「言語力だけで評価される」と感じてモチベーション低下
👉 解決策:
通訳係をつくらず、全体で支える体制を意識すること。
やさしい日本語+翻訳アプリ+ピクトグラムなど、**“個人に頼らない工夫”**をチームで共有しましょう。
■ 成功のポイント①「定期面談は“話す時間”ではなく“聴く時間”に」
私たちは月1〜2回、外国人スタッフとの面談を実施しています。
その中で大切にしているのは、“上司が話す時間”より“本人が話す時間”を多くとること。
本音を引き出すには、形式ばったチェックではなく、雑談や共感の姿勢が必要です。
「最近ごはんどう?」「日本の冬、寒すぎない?」──そんな何気ない会話が、
実は深刻な悩みの“入口”だったりします。
■ 成功のポイント②「“育成費”と捉えて環境を整える」
外国人材の採用費を「コスト」と捉えるのではなく、
「育成投資」として考える施設は、定着率が圧倒的に高いです。
当社でも、登録支援費用を抑えた分、
「翻訳されたマニュアルを整備する」「相談しやすい環境をつくる」といった形で、
支援から“育成”へリソースを回す支援プランを提案しています。
さらに当社では、
初任者研修・実務者研修・介護福祉士国家試験対策を専門に提供する研修機関と提携しており、
受け入れ後の教育フェーズまでを一貫してサポートできる体制を整えています。
「受け入れて終わり」ではなく、
“育てて、活躍してもらう”ための環境整備を、企業と一緒に考えるのが私たちのスタンスです。
■ 成功のポイント③「文化理解を“共有の機会”に変える」
「外国人だから」ではなく、「違う文化を持つ仲間が加わった」と考えると、現場の空気は一気に変わります。
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介護の考え方の違いを話し合う
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お国自慢の料理を共有する機会を設ける
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行事や誕生日に母国語の“ありがとう”を覚えて伝える
こうした積み重ねが、チームの一体感をつくり、定着につながるのです。
■ まとめ:「採用成功」=「定着」ではない
特定技能での採用がゴールではありません。
定着して初めて、採用は成功したと言えるのです。
だからこそ、私たち登録支援機関の役割は、採用後にこそ真価を発揮します。
最初の生活支援から、現場との橋渡し、研修・メンタルサポートまで、
「受け入れて終わり」ではなく「共に育てる」支援を。
外国人材とともに、未来の介護現場を築いていきましょう。